2012年9月13日木曜日

熱の滴

一ヶ月以上新しい記事をあげなかったら入った広告があまりに見苦しくて^^;
どうにかしないとと、とりあえず古い文章を。
(1年以上前にGalsart Empireの写真展のために書いたものの加筆修正です。







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・・・どうしてこんな酷いことを思いつくのです

 
「サディストだからな」


主の声が頭上から降って来る。
蝋の滴と一緒に。


何も見えぬまま闇雲にのたうちまわり逃げようとした私の頭を片手で抑えつけ、
主は苛立たしげに言う。


「動くな」
「動くと蝋が顔やあそこに落ちるかもしれないぞ」



・・・はい


悲鳴をあげれば主を喜ばせるだけ。
大嫌いな蝋燭を使われたのが悔しくて、私は必死で声を堪える。


ああだけど。


じりじりと芯が燃える音。
蝋が溶ける匂い。
熱。
私の大嫌いなもの。


ぽとりと落ちては、たーっと肌を転がり落ちていく滴。
熱い。
いくらそれがすぐに冷えていくとわかっていても、
落ちた瞬間の熱は痛みでしかない。
途切れなく降り注ぐ蝋。
たらたらと、ころころと、肩や腕に滴り、胸に溜まり、足をすべり落ちていく。


痛い。熱い。
この痛みは嫌い、耐えられない。
呻き、喚き、主に訴えた。




・・・熱いです


「熱いね」


・・・痛いです

   
「うんうん、痛いな」


・・・もういい、もうだめ、
ごめんなさい


「だめだ」


目隠しの布の下でぎゅっと閉じた瞼から涙が滲みだす。


・・・ごめんなさい
もう許してください
お許しください


   
「だめだ」


声をあげて泣いてしまいそうだ。
私はどうしてもこの苦痛が嫌いだ。


しゃくりあげそうになって歪んだ私の口を手で塞ぎ、
嗚咽を喉奥に封じこんで、主が私の耳元で囁いた。


「しおり」
「お前の苦しむ顔」
「興奮する」



・・・ああ


「興奮してこんなになってる」



だめ、そんなことを言わないでください。
想像してしまうから。


主の目の前に転がる、ぎっちりと縛られ、蝋に覆われて赤く染まった裸の女の体を。


触れもせず目で味わい、私の苦痛を舌なめずりするように愉しむ主の表情を。


・・・そして、主の生々しい男の興奮した体を。




    ・・・私は深く息を吐く。





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痛みで硬直していた体からふわりと力が抜ける。


そう、縛られたときに縄に身を委ねたように、
降り注ぐ熱の滴に身を任せればいい。


ただ痛いと泣けばいい。
ただこの苦痛を受け入れればいいんだ。





・・・好きになりたいです


「ん?」


・・・ご主人さまが蝋燭を好きだから、私も好きになりたいです




そう好きになりたい。
主が楽しいから、
主が欲情してくれるから。
私は主が楽しいことが好きだから。
主が私で楽しんでくれることが大好きだから。




・・・好きになりたいです
蝋燭を見ただけでうっとりするくらい
好きになりたいです
好きになるようにしてください

 
「ふふ」
「可愛いこと言うな」





主の指先が胸元に触れる。
蝋で恐怖と苦痛に封じ込めた体から、丁寧に赤い蝋涙を剥がし、呼吸をさせてくれる。解放してくれる。
愛おしむように軽く乳首をひねりあげてくれた指が鳩尾から腹へと降りて、
足の間をなぞった瞬間に止まった。




・・・主の上ずった声。




「しおり、お前の体」
「すごい」