2011年2月26日土曜日

犬の女







ある日見た映像。
裸の女。私と同じようにスチールの首輪には鎖をつながれて這い、
主人の命令のままに、延々と投げられた骨をくわえて戻ることを繰り返していた。
そう、まるで私の生活の一部をそのまま映像にしたようなものだった。


正視できる姿じゃなかった。
あまりに惨めであさましく、映像の中の女は狂っているとすら思った。


でも私だって主のためになら同じことを喜んでする。
なら、私も狂ってる?
それをさせる主は?




主は映像の中と同じ視点。映像の女と目の前の私は違う女だというだけ。


狂っていると感じないでいられるのか?と尋ねた私に、主は


「それはお互いに一種トランスしてるんだよ」


と答えた。


「夢ではないけれど、うなされているような、でも興奮してぎらぎらして」
「ちょっと異常な状態ではあるな」






・・・自分はどうしてあんなあさましいことをするんだろう?


「うん」
「でもそれで興奮する自分がいるんだよな」



・・・はい。そうです。


「理屈では説明できないから」


・・・ええ。
でもあさましい。醜いとさえ思う。



「俺だってしおりを嫌いだからやっているわけじゃない」
「好きな女にだから」
「跪かせて弄ぶ、犬のように扱う」
「好きな女にそうさせたいと思うんだ」
「変な精神構造だな」






私は黙って主の膝に頭をこすりつける。
そうまるで、本物の犬のように。
多分その仕草がいちばん気持ちが伝わる気がするから。
主も大きな犬を撫でるかのように、髪から背中までを撫でてくれる。




「大好きだよしおり」
「酷いことしてやるね」



・・・はい。ひどくしてください。


「よしよし」
「玩具にして、たくさん酷くしてやるからね」



・・・はい。


 

2011年2月17日木曜日

大丈夫

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主の誘導は時々、私には効果が強過ぎて。
主が思っていた所よりももっと遠い場所に私が行ってしまうことがある。


そんな時は、私だって気づいているんだ。
自分が行き過ぎてしまった、
主が考える範囲を自分が越えてしまったことを。



今までなら望まなかったことを望み、
今までなら言えなかったことを言っている自分にとまどいもする。

主の反応を伺い、自分がまだ主の許しの内にいるかを確認もするし、
自分のしていることがどれだけ普通じゃないか、自覚もしてる。


けれど私が行き着いたそこは、思ってもみなかった程、心地良くて。
もっと先に行きたいもっとひどくなりたいと主にねだってしまう。
私の中のあさましくも貪欲なマゾヒズムは屈辱と罰という安堵を得ようと暴走し、
とどまることを知らない。



主が常に見守ってくれていることを信じていても、
こういう時はどうしたって不安で。


だから私は「いやじゃない?」と尋ねる。
主の許へ来たときから、この言葉を何度口にしたことだろう。



主も今まで返事をくれた時と同じように笑ってくれる。


「いやならやめさせてるよ^^」


それもまたしおりだと言い、それを楽しんでくれる。




なのに私は、主につっかかる。
それは多分、自分がこんな遠くに来てしまったことへの無意識の恐怖だ。
最初誘った主のせいにし、主に噛みついて、主に甘えてるんだ。






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・・・どうしていつまでたっても、いやじゃない?って怯えるんだろう
それがいやだ


そう私が呟いたとき。


「それは怯えというより普通の感情だと思うよ」
「そこはそんなに気にするな^^」



主が優しく笑ってくれた。
主はぽろぽろと泣き出した私の頭を
犬を撫でる様に優しく、少し荒く撫でてくれた。



「落ち着いて。大丈夫」
「大丈夫だから」


「そのままでいい。大丈夫^^」