「しおりの苦しむ声や許しを乞う声は」
「とても耳に心地良いよ」
主がそう言う。
いまだに吊られるのが嫌いな私をいたぶり、楽しみながら
不似合いなほど優しい声で耳元で囁く。
「可愛い奴隷だな」
「痛いか?」
痛いです
苦しい
たすけて
快楽に溺れるどころではない私は、ただ悲鳴のような声をあげ続けるだけ。
「苦しいね」
「だんだん俺を嫌いになってきたか?」
・・・そんな。
そんなことある訳がない、
どうしてそんなことを言うのですか・・・?
好きです
大好きです
苦痛で混乱し、ぐちゃぐちゃになりながら答える私に、主はこんな時だというの
「よしよし」と優しい。
苦しい、お願いです早く降ろしてください・・・
ようやく柱から降ろしてはくれたけど、私の苦手な体勢で
もっと私の嫌がることをさせて
はずかしい、撮らないでくださいと懇願しても
「だめだよ」
「一番きれいな姿だ」
そう答えるだけ。
何がきれいなの?
ただ淫らなだけ。
わからない・・・
もう私が昔のように命令に逆らって立ち上がったりしないと知っている主は、楽しげにシャッターを切り続ける。
アバターの体が顔を歪め、腰をふり続け、高まっていく。
私はシャッター音と主の言葉に追いつめられ、ただ声をあげながら痙攣を繰り返す。
主がようやく私の身体を抱き降ろして
私を自分の下に横たえ、足を開かせる。
こんな時、主には私がどんな風に見えているんだろう、どんな気持ちになるんだろうと思う。
軟体動物のようにぐにゃぐにゃの、従順に貫かれるのを待つ女の体を見下ろし、無様な格好に足を押し広げる時・・・。
これがきれいだなんて私は思わない。
あさましい欲望の姿。
だけどこれは一つの人の本当の姿で。
穏やかで紳士な主も本当なら、この主も本当。
当たり前の、ただ一人の男の人の姿。
主が快楽の声をあげ、深く溜め息をつき、私に体を預けてくれる。
私はその背中に腕をまわし、ぎゅっと抱きしめる。
汗や色々なものに覆われて隙間なくぴったりと重なった体、粘膜。
心がとけていく。