2011年3月5日土曜日






「舌を出せ」


主が言う。


私は精一杯舌を突き出す。


「もっと」


また主が言う。


痛い程伸ばした舌は、力をこめたせいで勝手にぶるぶると震えてしまう。
ひくひくと痙攣し、何かを舐めあげるときのように舌先が尖り、丸まることを繰り返す。
その動きは、自分の意思と関係がない分、余計に淫ら。


主はまだ許してはくれない。


口中に唾液が溜まる。
蠢いている舌先は逆に乾いて、苦しい。
お願いです、もう許してくださいと言葉にしたいけれど、
今言おうとしても惨めな呻き声にしかならないだろう。
だから間近な主の目を、訴える様に見上げた。






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主がようやく自分の舌をのばして、私の舌先に触れてくれる。
目を優しく細め、微笑みながら私の舌を味わってくれる。


その温度。その湿った感触。
ほしかったのです。
わずかな接触点から唾液が交換されることすら感じとれる。
あなたがほしかったのです。


もう私は目を開いていることもできず、ただただ全身の感覚を舌先に集中する。
もっと鋭敏に主の舌を感じとろうとさらに自分の舌を伸ばす。


そんな蕩けるような甘やかな感覚の交わりに酔いそうになった瞬間。


主が私の舌を思いきり吸い上げた。




鋭い痛みに目を大きく見開き、抗う私を抑えつける。
さっきまでそこにあった優しい微笑は跡形も無く、
サディストの加虐の意思と欲望だけ。


口を封じられたままの喉の奥であげた悲鳴が聞こえないかのように、
自分の口中の私の舌を舐め、噛む。




吸い上げられた舌のつけねがきりきりと痛む。



ああ私はこのままこの人に食い尽くされるのかも知れない。



 

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